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【No,140】
施設名: 特別養護老人ホーム和幸苑
職名: 主席補佐兼主任相談員 氏名: 鈴木 元章
介護服(つなぎ服)からジーパン姿に変身


 身体拘束は人権擁護の観点のみならず、身体機能の低下、心理状態の悪化に繋がり高齢者のQOLを損ないかねません。当施設では、介護保険の導入とともに利用者のケアのあり方を再度見直し、身体拘束廃止に向けた取り組みを進めています。
 今回のケースは、当施設に入所する前から、やむを得ない理由で利き腕をさらしで縛り腕の動きを制限されていた利用者のケアについて紹介します。
 K氏 75歳 男性 平成10年12月28日入所 認知症度 Vb
 平成8年9月、脳梗塞にてA病院入院。後遺症として左半身麻痺となり車椅子生活。退院後、老健施設入所を経て、平成10年12月当施設へ入所。入所後も衣類を裂く、自傷行為、陰部をかきむしる、紙おむつをちぎって食べる等が頻繁でした。家族からもどうしようもないから今までどおり腕を縛って下さいと言われ、私達職員も仕方ないと拘束を肯定する考えでした。しかし、問題・業務を重視するよりも本人の生活を重視する方向へ変えるため、ケアの取り組みについてQOL委員会を中心に話合い、時間がかかってもいいから一つひとつ拘束をなくすことにしました。

  初めはY字型ベルトの使用をやめることです。長時間の座位は、健常者でもつらいものです。車椅子に座る時に滑り止めマットを使用し、フットレストの代替にダンボールで足置きの台を作り、自分で踏ん張れるようにすると、腰痛の軽減、ずり落ち防止に繋がり比較的早期に使用をやめることができました。次に介護服ですが、手を縛っているのだから着る必要がないと普段着に変更しました。見守りを強化しても職員が目を離すと陰部をかきむしる、紙おむつをちぎる、衣類を裂く行為が続きました。ケース会議の時、介護員の提案で大きめのジーパンをはきベルトを締めたらどうかとなり、家族とも相談し、着用してみました。確かに手を自由にしても今までのように簡単に手を入れることはできなくなりましたが、ジーパンの上からかきむしる行為は続きました。

  発想を変え、手が伸びる行為は排尿のサイン?排泄のサイクルを徹底的に観察、把握し、陰部清潔のため、おむつ交換、清拭を多くし、同時に皮膚科も受診しました。
 この取り組みを三年間継続した結果、手を自由にしても陰部へ手を伸ばす行為が確実に減りました。残念ながら完全とまでは達成していませんが、本人が手を自由に動かせるようになったことと、娘さんが来苑した時「じいさん、ジーパン似合うよ」と言ってくれた時、そして、何よりも長年、手を縛った跡がきれいになったのを見た時、小さな喜びを感じました。
 次は利用者のベッド四点柵使用を可能な限り少なくすることが目標です。全職員が共通の思考形態を共有化、工夫して、その人らしく生活を送っていただくことを日々、考えていきたいと思います。




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