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【No,198】 |
施設名: 井川町特別養護老人ホーム さくら苑 |
職名: ペンネーム |
氏名: なは みずき |
一期一会 |
晩秋の頃、仕事の関係で遠い昔学生時代を過ごした杜の都仙台に向かいました。鮮やかにお色直したその姿を『見てよ』とばかりの野山に目を奪われました。少しばかり先の県境にさしかかると、周りの景色は冬景色と変化し、まるで墨絵の世界に飛び込んだかのように、その重厚さに引き込まれる思いがしました。懐かしい仙台の街並みは、記憶にある区域の名前はそのまま残っているものの、さすが東北の中心都市たる姿にかわっておりました。
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最近では、施設内ターミナルを経験する機会が増えており、今回の出張に出かける前にも息をひきとられた方がおりました。
体調に変化が見られた時点より家族とも連絡を取り合い、施設に足を運んでいただきながら、嘱託医の指示のもとでその方を介護してまいりました。
家族は、病気で倒れられた時点から寝たきりとなり、会話や反応を表現することすら困難となった親であっても、『心の支え』としてこれまで過ごしてきたとのことでした。
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目の前の御本人は、瞼をたまに開かれるが、弱く肩呼吸をしながら薄い呼吸をくりかえしており、いつその肩の動きが止まるかわからないといった状態である。ご家族親族がそばに寄り添い、肌に触れ、次第に体温を失っていく体をさすってあげておりました。ご家族は『頑張れ、なんてもういわない。ここまでこんなに頑張ってきたんだもの、もうゆっくりしていいんだよ。』と話しかけておりました。
部屋の中には、本人のかつての話をしてくれるご家族の声と最近の施設での様子を伝え、時々笑顔をまじえながらの会話のほかに、室内に機械音はありません。
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私たち施設職員は、この場面において、その方の生き方や姿を見ることができます。その方の最後を家族親族、そして私たちがご一緒して立ち会うことになります。利用されている方々に最善を尽くすことはもちろん、ご家族の方々への配慮をどこまでできたのか、といつも考えさせられます。
入所のときから、最後の瞬間まで自分達のできることを姿勢として示していきたいと思います。利用者そしてご家族との共感し合える職員をめざし『ここでの出会い』を大切にしたいと感じている今日この頃です。
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